乗り継ぎ・ボストン

”やっと”と言う感じでイリノイ州にあるシカゴ”オヘア国際空港”に着いた。12時間もの間、狭い座席にずっといたので体が痛くなってしまった。何処にどう行っていいのか分からなかったので、みんなに着いて行けばいいのかな?と思い人の流れに沿って歩いていった。すると、たくさんの人達が列を作っていた。日本語で”入国審査”と書いていたので、列に一つに加わり、飛行機の中で書いておいた緑色の紙と白い紙をパスポートと一緒に用意した。”留学の手引き”みたいな本によると渡米の目的と期間、そして学校名などを聞かれると書いてあったので、何度も頭の中で何て言うかを英語で繰り返していた。

いざ、自分の番になると緊張して心臓がドキドキしていた。本の通り、渡米目的と期間を聞かれた。何度も練習してたから何とか答えることが出来た。次は、学校の名前だ!と思っていたら、審査官の人が何か違うことを言っている。パニックに陥った私には何て言っているかよく分からなかった。 私がもじもじしていると、後ろに並んでいた人が

「I−20だよ。学校からこんな紙貰わなかった?」

と言って一枚の紙を見せてくれた。

「あっ!」

私は急いで鞄の中を探した。確か貴重品入れに入れたはず何だけど...

「あった。」

そう言って審査官に手渡した。すると、にっこり笑って判子をガシャガシャと押してくれた。そして最後に、

「Have a nice day!]と言ってくれた。

私はサンキューと言ってそこを離れていった。

I−20というのは、アメリカの大学や学校が外国人を受け入れるときに発行する書類で、それがないとビザの申請ができない。私はもうビザを取っていたので、それはいらないと思っていたから、鞄の中にしまっていたのだ。

乗り換えの飛行機を探そうと辺りを見回したけれど、全く何処に行っていいのやら分からず、途方に暮れていた。するとさっきの男の人が話しかけてきた。

「大丈夫?」

「あっ、さっきはどうもありがとうございます。何て言っているのかさっぱり分からなくて...助かりました」

彼はにこっと笑って手を横に振った。

「いえいえ。乗り換えか何か探しているんですか?」

私が旅行会社の旅行日程表を持っているのに気が付いたらしく、そう聞いてきた。「えぇ、何処に行っていいのか分からないんですけど、分かります?」

「何処に向かうんですか?」

「ボストンなんですけど」

「えっ、ボストン?ちょっとそれ見せてくれます?」

と言って、その日程表を指さした。

「あっ、やっぱり。僕の飛行機と一緒だ」

「えっ、ホントですか?」

「良かったら一緒に行く?シカゴって乗り換え結構めんどくさいからね」

「ホントに?良かった、どうしようか困っていた所なんですよ」

それから駅らしき所に行き、無人の電車に乗って違うターミナルへと移動、私達の乗るボストン行きのゲートへと行った。その間、彼の名前や学校、どのくらいボストンにいるのかなどを話した。

彼の名前は甲斐弘幸(かい・ひろゆき)、ボストン州立大学、ボストン校に通う23歳。政治学を学んでいるそうだ。2時間の待ち時間の間、軽く食事をしながら色々とボストンのことを聞いたけれど、地理が分からないのでいまいちピンと来なかった。

そうこうしているうちに、ボストン行きの飛行機の出発時間になり、3時間ちょっとでボストンに着いた。

私の英語学校の送迎サービスが迎えに来ているはずだと甲斐君に伝えると、「何か困ったことがあったら電話してよ」と言って彼は電話番号を渡してくれた。重い私のスーツケースも無事ボストンに着き、ゴロゴロと転がしながら辺りを見回した。すると、がたいのいいアメリカ人が私の名前の書いてあるボードを持ってうろうろしていた。目が合うと、これは私の方に歩いてきた。

「Ms.Hiiragi?」

そのアメリカ人がいきなり私に聞いてきた。私はちょっとたじろいだけれど、何とか返事できた。

「Yes.」

その後何か色々言っていたけれど、何て言ったのかあまり分からなかった。私の名前を知っているからには送迎サービスの人だろうと信じ込み、とりあえずこれで無事学校に行けると思いながらその人に着いていくと、なんと黒い大きなリムジンが待っていた。

「これで行くんですか?」

思わず日本語で聞いてしまった。まさかボストンに来ていきなりリムジンなんかが迎えに来てるとは思わなかった。何かの間違いかとも思ったけれど、そうでもないらしい。でも、なにげにラッキーと思ったりもした。

リムジンの窓から摩天楼を眺めながらゆっくりと走り、数分でボストン市内に入った。途中運転手さんが色々話しかけてきたけれど、あまり私が英語が分からないのが分かったのか、後の方は黙って運転していた。急に車が止まり、運転手さんがドアを開けてくれた。どうやら着いたらしい。

「サンキュー」

と言うと、彼は帰っていった。

入り口を開けると、数人の女の人達が待っていた。助かったのは日本人の生徒が一人いて、手続きを手伝ってくれた。私が来るのを知っていたらしく、学校側が考慮してくれたのだという。スムーズに手続きが済み、部屋に案内された。長旅で疲れた私は、スーツケースからパジャマを出し、それに着替えると死んだように寝てしまった。明日は1日休みで、7月1日からオリエンテーションが始まる。私のルームメートは明日来るらしい。長かった6月29日もようやく終わりを告げる。


さて、無事にボストンに着いた美樹。ボストン第1日目に飛んだハプニングに!!それは何でしょう? みなさんの意見をお待ちしています。