プルルル−、プルルル−。
「もしもし?俺。元気?」
ちょっと疲れ気味の声で修がかけてきた。
「今帰ってきたの?お疲れさま」
「週末は疲れたよ。天気が悪くてさ、撮影がなかなか進まなくて、日曜日は朝から晩までずーっと仕事だったよ。ろくに物も食べずに働いてたんだぜ」
「ほんとに?大変だったわね」
「そうそう、誰だったか、高校の時かなんかの友達との食事は?久振りで昔話とかいっぱいしたんだろ?」
「うん。とっても楽しかったよ。舞ちゃんね、たくさん料理作ってくれて、お腹がはち切れそうになるぐらい食べちゃった。とっても美味しかったわよ。」
「あっ、そう。いいなー、俺なんかホカ弁ぐらいしかまともに食べてないよ。何話したの?」
「えーっと。高校の時の同級生や先生達が、いま何処で何をしているとか、誰が結婚したとか。そうそう、彼女もうすぐ結婚するんだって。だから彼女の婚約者ののろけ話をさんざん聞かされちゃった。後は仕事の話とか...」
「仕事の話?」
「うん...」
「どうしたんだよ、なんか暗いね。何かあったの?」
「...実は私転職してみようかなってちょっと考えてたんだ」
「転職?どうしたんだよ突然」
それから中島舞との会話と就職情報誌で仕事を探してみた結果などを順序よく説明した。
「へー。そんなことがあったんだ。まあね、結構仕事が面白くないってぼやいてたもんな」
「ねえ。自分をアピールできる事って何なんだと思う?」
「そりゃ、人によるんじゃないのか?」
「私今のままじゃ、どこにも入れないって事が痛いほどわかったの。でもどうしていいのかわからない」
だんだん気分が落ち込んできてしまった。
「でも、せっかく仕事変えるのなら、自分が好きなことをやった方がいいよ。俺とかさ、こんなにこき使われて、すっげーきつい時もあるけど、写真好きだし。好きなことやっていると、嫌な事も我慢できるよ」
「いいわよね修は。やっていることと、好きなことが一緒で。」
「馬鹿、これでも一生懸命頑張って掴んだ物なんだぜ。それでもこれで喰っていけるかわからないのに」
「そうよね。えらいよ修は」
「美樹って、ホテルで働きたいって昔言ってなかったか?結構人と会うこと好きみたいだし、接客業とか向いてんじゃない?」
修の言っている事はまるで的外れというわけでもなかった。大学時代に色々やったアルバイトで長続きしたのはほとんどが接客業だったのだ。それに3年間商社で働いて、ほとんど毎日コンピューターに向かってこつこつと働くのは、あまり性に合っていないみたいだとつくづく感じた。次の仕事は人との触れ合いがもっとあるような所にしたいと思っていた。
「ホテルね。実はちょっと考えてるんだ。でも就職情報誌には何処も募集していなかったの」
「あっ、俺の知り合いにホテルで働いている人がいるから、色々聞いてみたら?公募していないかも知れないけど、人探しているかもよ。それにホテルでの仕事内容がちょっと分かって参考になると思うよ。どう?」
「ほんとに?...うん、悩んでいても仕方がないもんね。今はいろんな人に会って情報集めなくっちゃ。それに今の所唯一やってみたいなって思っている仕事だし。」
「OK。そうこなくっちゃ。じゃあさ、早速明日にでも連絡取ってみるよ。詳しいことが決まったらまた電話するよ」
「うん。 修、....ありがとう」
すごく嬉しかった。自分の置かれている状況がだんだん分かってきてちょっと落ち込んでいたから、余計に修が私のことを心配してくれている気持ちがありがたく感じられた。目の前におかれている電話を眺めていると、今切ったばかりなのに又話たくなった。
「もしもし、修?」
「美樹?どうしたんだよ、何かあった?」
「ううん。修...大好きだよ」