手紙

”プーン”安定飛行体制に入ったみたいで、シートベルト着用のランプが消えた。

私は緊張していたせいかとってもトイレに行きたかったので、ランプが消えるとすぐにトイレへと急いだ。一息着いて自分の席に戻ってくるとき、はじめて機内をゆっくりと見回した。6月下旬という事でそれほど機内は混んでなく、わりと空席が目に付く。窓側に座った私の隣には、結局誰も座らず通路側に一人アメリカ人のおじさんが座っているだけだった。やっと緊張が解け始め、別れ際に雪枝から貰ったカードでも読もうと思い、鞄を開き、一緒に持ってきたアメ玉と一緒に取り出した。

”Dear 美樹:

今日はとうとう美樹にとって、記念すべき出発の日だね。本当に美樹が行っちゃうとは思わなかったけど、やると決めたらとことんやる所は、昔から変わらず美樹らしいね、羨ましい限りだよ。そんな美樹を私は尊敬しています。 お互い仕事には満足していなかったけど、納得がいかない自分をそのままにしない美樹の行動力にはホント脱帽。私なんかそういうの全然ダメだからこのまま暫くここにいるんだろうな。偶然にも中島舞ちゃんと再会して、いっぱい悩んでいたけど、結果的には自分のやりたい事というものを見つけることが出来て、本当に良かったね。親友が遠くに行っちゃうのは、正直言ってつらいけど、これからの美樹にとっての大きなチャンスを、陰ながら日本から見守って(見張る!?)いるよ。頑張り屋さんの美樹はちょっと無理しがちだから、耐えられなくなる前に私にだけは相談しなよ。いつでも相談に乗るからね。体にだけは気をつけて、弱虫の私の分まで美樹の夢に向かって頑張ってください。必ず遊びに行くから、それまでに英語を頑張って勉強して、私を案内してね。私の誇り、美樹へ 雪枝より”

私は涙が止まらなくなってしまった。別に悲しい訳でもなく、寂しい気持ちになったのでもなかった。ただ、雪枝という、一生でこれ以上ない親友が持てたことが、とっても嬉しかった。泣き顔を人に見られるのが恥ずかしかったので、暫く雲と太陽しか見えない外を眺めていた。